記憶の海の釣り人

釣りざおをもって桟橋に出る。
視界一面は海。静かに波を打つ水面が見えるだけ。
小さい腰掛け椅子に座り、餌をつけず投げ入れる。

よっと、、、引っ掛かったぞ、よいしょ。

そうそう、キャベツだ。この、薄い緑色と白の混じった丸いもの。

よっと、、、。

ボールペン。

昨日の晩御飯。

日本。

卵焼き。

子どもの頃の夢。

不思議だな。こんだけ広い海なのに、どこに、何が沈んでるか何となくわかるんだ。あの辺りかな?って思って針を投げ入れると、ちゃんと引っ掛かかってくる。

なんとなく、昔のことは遠く、最近のことは近くにあることが多いけど、気のせいかもしれない。

いちど確認したら、すぐに海に戻す。キャッチ&リリースだ。もったいないって?平気だよ。いつだって好きなときに釣り上げることができるんだから。

さあ、今日も一日、棹をふる。

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