専門書100冊チャレンジ:認知症ケア、演劇、ワークショップ、介護に関連する書籍(自分で専門書と感じればOK)を100冊読んでレビューします。
5冊目:マンガ認知症 ニコ・ニコルソン/佐藤眞一
家族介護の経験のある漫画家さんと認知症心理学の研究者とのコラボ本。マンガと解説が交互にあるので読みやすい。心理学の観点から、具体的な対応策が書かれてあり、知らなかったこと、現場で活用できそうなアイデアもありました。ただ、特効薬的なことはなく、やはり地道なケアが必要ようなんだな~という感想。
認知症全般の解説から、認知機能についての解説もあり、最初に読む本には最適かと思います。最後に症状からの索引がついているのが画期的!
気になった部分。
・老年行動学、「認知症の事例を集めて三千里」
・家族が困っているのは本人が困っているから。本人が楽になれば家族も楽になる。
・大阪大学の今も事例検討会を月一回行っている。
・認知症とはなにか、の定義。DSM-5(アメリカの精神医学会の診断マニュアル)に基づく。「3つの条件:①何らかの脳の疾患により②認知機能が障害されて③生活機能も障害される」うつ病やせん妄などは除外診断する。 例:①アルツハイマー病で②見当識障害により③トイレを洗濯機と間違えて服を入れてしまう
・認知機能は6種類:①複雑性注意(2つのことを同時にする)②実行機能(予定を立てる・暗算)③学習と記憶(短期記憶:新しいことを覚える。長期記憶:言葉の意味がわかる。自分の経験を覚えている)④言語(相手の名前を思い出せる。相手の言いたいことが理解できる)⑤知覚―運動(空間認知:迷子にならない、服が脱ぎ着できる。視覚認知:人の顔がわかる。)⑥社会的認知(思いやりを持てる。相手の表情から感情を読み取る。我慢できる。暴言をはかない)
・認知症は介護や家族の支援を前提にした診断基準になっている珍しい病気。
・老化の物忘れは「思い出せない」、アルツハイマー病による認知症の物忘れは「覚えられない」の違い
・現代は認知症の診断にMRIが必須になった。認知症の専門医は神経内科と精神科医。
神経内科医は脳の障害=原因疾患を診る専門医。(アルツハイマー病、レビー小体病など) 精神科医は行動の障害を含めた認知症を診る専門医(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症)
・リアリティ・モニタリング:その情報が事実か、単なる想像なのかを判断する認知機能。
・ソース・メモリ:その情報を「いつ」「どこで」「誰から」「どの状況で」獲得したかという情報源。
・物盗られ妄想が起きるのは、まず記憶の問題があり、さらに想像と現実を区別する機能が低下することによって起きる。
・総合診療専門医(2018年4月に導入された専門領域、仕事や暮らしまで含めて診察を行う。)が認知症患者を診るのが望ましい。精神科・内科など別々に薬を出されて処方薬がたくさん出てしまうのを防ぐため。→マンガ19番目のカルテ。
・展望記憶。朝起きて「今日は何か予定があった」(存在想起)、「〇〇さんと会話する日だ」(内容想起)という順で思い出す。
・選択的注意、、認知症の人は正面から話しかける・目を合わせて話すとコミュニケーションが取りやすくなる。
・見当識:時間と空間の中に自分を位置づける能力。英語ではorientarion(定位)
・認知地図:頭の中で映像で作る地図のこと
・脳血管性認知症では視覚認知を司る後頭葉の障害によって「街並失認」(よく知った街並みを見てもそれと認識できない)が起こることもある
・夫婦ではないがお互いを夫婦だと思っている男女。二人で歩くときはスピードが遅くなった。
・老化現象の3つの段階①歩行できなくなる②尿失禁③食べられなくなる
・ケアがコントロールに変わってしまうのは相手に何かするだけの関係だから。それを打開するには、小さな返報を積み重ねること。小さなお手伝いをしてもらいありがとうを言う関係を作る。例:チラシでゴミ箱を作る、洗濯物をたたむ、野菜の皮をむく等
・認知症の人も周りの人の気持ちがわからない
・アルツハイマーの進んでいる人の表情認知であまり悪くならないのが喜びと嫌悪(驚き、敵意、悲しみ、不安)→だから笑顔でいることが
・日常的な「じっとしていてね」も実はコントロールかもしれない。転倒するのが危ないからとただ頭ごなしに止めるならばコントロール、なぜ出ていきたいんだろうか?と考えて対応するのはケアになる。
・お互いの気持ちがわからない、その時には介護する側が認知症の人の世界に入っていくしかない。筆者がやっているのは「認知症の人のはなしを聞くこと」。
・認知症の人が覚えている昔の話を笑顔でする。
・笑顔の裏を察することが難しいので演技でかまわない。
→役者の気分、演技をしているつもりで接する。ただ、つまらない話を楽しそうに笑顔で聞くのは難しい。それを興味深く聞けるなら、演技でなくても笑顔になり、認知症の人の気持ちを穏やかにさせる効果がある。そのためには聞き手の中に昔の知識や関心が芽生えていなければならない。それを作るプログラムがあれば、介護現場で有効ではないか。
・毎日のご飯をつくるのと同じくらいの気持ちで介護ができるのが理想。
・何度も聞いてくるのに対応策としては、本人に聞かれる前に答える仕組みを作る
・紙に書いておく、食事の器を下げないでおく等
・認知症ケアの応用行動分析という手法。問題がある時には近寄らない。落ち着いている時に近づく。
興奮した状態だと人が来てくれると条件付けられてしまうのを、穏やかだと人が来ると学習してもらうというもの。
・ベネフィット・ファインディングで大変な状況の中からでも自分にとって良いことを見つける