介護にかかわる人のための演劇ワークショップ第2回 レポートです!

 

2019年も2月になりました、だゆうこと土田です。

認知症講座の最中

最近は私、37歳にして初めて虫歯になりまして、歯医者通いが始まりました。歯磨きはやっぱり大事だな、、、と実感している日々です。当日も歯が欠けながらワークショップやっていたのでした、、、虫歯って怖いですね。皆さんもお気をつけください。

 

さて、第二回介護にかかわる人のための演劇ワークショップ、レポートです。このレポートは、当日参加者の皆さん、当日参加できなかったけどどんなことやるの?と興味を持ってくれている皆さんに向けて書いています。ワークショップこんなことやったよ、という内容、我々のどんな考えがそのワークに含まれているのか、その他ワークショップから生まれた考察などを書いていきたいと思います。

  さて、当日午前から集まっての共同主催者田澤さんとの打ち合わせ。

おやつコーナーにて

喫茶店で、こんなワークやりたいんだよね、と私が話すと、うーんと考えたかと思うとあれは?これは?と指摘をもらい、みるみるうちに一つ新作ワークが出来上がりました。後述しますがキラーコンテンツになりそうな予感。今回の参加者さんは4名。演劇関係の方が多かったです。リピーターの方1名、初参加3名でした、ありがたいことです。介護関係・育児関係の方、ご参加お待ちしています。

 それでは、ワークの内容に入っていきます。会場は我らがホームタウン(!?)、松原区民集会所の和室。畳で落ち着いた雰囲気、緊張感が和らぎます。最初のご挨拶を終えて、まずは「歩き回る」です。自由に部屋を歩き回り、会場に体をなじませます。
ストップして目を閉じてもらい、指定のものが部屋のどこにあるか、を指さしてもらいます。細かな観察が大事ですね。姿勢を良くする歩き方もやりましたね。歩きながら、舌の先を上アゴにつけて、あごを少し引きます。これだけで姿勢が良くなるから不思議。手の角度を変えるのもやりましたが、私の見本を見せれば良かったですね。次に歩き回りながらのアイコンタクト、挨拶を言いながらのハイタッチ、肩と肩、背中と背中、膝と膝の挨拶。今回さらに、指と指、爪と爪をやりました。指の時、E.T.やればよかったな。爪と爪は意外と体の動きが面白かったです。ミニマムな方のコントロールが難しかったりしますね。

 最後はスピード合わせ。通常の歩きを5段階中の3として、声に出された数字に合わせてスピードを調整します。5が最速、1が最低。とっさにスピードが変わるので、一瞬でテンポを変えるのが難しい。最後は0.5から、0.00001をやりました。想像もつかないような遅い動き。これを身体で体験していただきました。後日、職場で介護中にこのワークが役立ちました。お部屋まで行きたいのに、周りが気になったりして中々進んで下さらない入居者さん。つい、あせって急がせてしまうのですが、そこでこのワークを思い出して、とんでもなく遅いペースにギアチェンジしてみたんですね。動きも、しゃべり方もゆっくり。そうすると、自分のあせりがふっと消えて、落ち着いて声掛けすることができました。介助が終わった後、片付けなど業務に戻ったらギアを5にしてスピードアップ!このスピード合わせワーク、ケアに関わる方にいいかもしれません。それにしても自分のワークショップで仕事の気づきを得るなんて、なんと役得なのでしょうか。

 

休憩中に何故か始まったストレッチタイム
ジャンプの瞬間!

 歩き回るが終わったあとは、「氷をとかす」。共同主催者、田澤さんタイムです。最初は円になって拍手。全員で息を揃えてやりました。拍手+ジャンプと難易度が上がっていきます。拍手が一発でそろうと気持ちいい。その次は、前回もやって評判の良かった「ミャンマー」というワークです。

 全員で円になって、順番に「ミャンマー」と口に出すだけ。順に数を増やしていきます。最初の人がミャンマーと言ったら、次の人がミャンマー、ミャンマーと2回、さらに次の人は3回、、、という風に。魔法の言葉、ミャンマーは気合を入れれば入れるほど失敗してしまいます。この、緊張感。

失敗しちゃった!

 今回は、失敗したら「失敗しちゃった!」とポーズをとる、それと並びをシャッフルして、「テヘペロ」ポーズ(ペコちゃんみたいにウインクして舌を出すポーズ)をとる、の2パターンをやりました。このワーク、失敗することは目的でないと思います。それよりも、失敗をおそれず「チャレンジ」する。成功したらうれしい。でも、間違える時はある。その時に(ああ、だめだあ)と落ち込むのではなく、(失敗しちゃった、えへっ!)と皆で前向きに受け入れていくということ。が大事なのかもしれないですね。ワーク自体はシンプルながらも盛り上がり、笑いも生まれていましたね。

 「氷をとかす」の最後は、「これは何ですか」。部屋中に小物を置き、二人ペアになって、部屋を歩き回りながら「これはなんですか」と聞きあいます。相手は「これは○○です」と答え、「これは○○なんですね」と返事するだけのゲーム。最初に、これ面白いのかな?!と思わず思ってしまいましたが、参加者さんから、「自分の子どもの部分に立ち返ることができた」、といった内容の感想をもらいました。自分が言ったことに、そのまま認めてもらう=承認してもらう感覚をこのワークで体験されたのかもしれません。次に、これは○○な○○です、と形容詞をつけていいます。(例:赤い鉛筆です)最後には発展形として○○の内容を自由に変えて言う、をやりました。普通の鉛筆を指さして「これは、丸い、くじらです」。想像力を豊かにいきましょう。さらに、「これはアーな、ウーです」みたいに意味のない音にしてもかまいません。やっていくうちに参加者さんの発想力が少しずつ開放されていきます。思わず笑ってしまう回答もあり。私は、このワークの様子を見て、介護現場で見覚えのある光景だ!と一人興奮しておりました。介護現場では、認知症のお年寄りが目の前の物を、事実と違う物に認識して発言することは良くあるのです。「あそこに男の人がいるわ」とか、「これは○×▽(単語にならない発声)なのよ」など、、、。慣れていないスタッフさんだと、思わず発言を否定したり、自分達の都合の良いように誘導したりしてしまいがちです。そうではなくて、「ああ、男の人がいるんですね」「○×▽なんですね」と、まず、受け入れてあげることが大事なんだ、ということを再認識できました。

後日、職場で使ってみたのですが、一番発見があったのが、お年寄りに対してではなく、スタッフさんに対してでした。職場にてスタッフ同士の会話中など、つい否定したり指示したりしてしまっていたんです。反省。これは介護現場だけでなく、どこの職場、家庭でもそうかもしれませんね。日常生活にも役立つワークでした。

 予定を少し変更して、「YESNOゲーム」。質問に対してYESNOの位置に並びます。お酒が好き?介護の経験はある?など、参加者さんの人となりや経歴がうっすらと分かってきます。次は「並びかえゲーム」。言葉を使わず、お題にそって一列に並びます。びっくりしたのは指の温度順。最初の人からすごく暖かい!これ以上暖かいなんて、、と思いましたがちゃんと順番通り暖かくて冷え性の私は驚きました。かなり指温度の高い人揃いでしたね。並び替えの最後のテーマは出身地。北から南の順に並びました。中央にできた東京(世田谷区、杉並区、北区)の皆さんが正確な位置関係でならんでいて面白かったですね。足の大きさもやりました。

だゆうの認知症講座でカンタンに認知症の定義を説明したあと、生活の台本に入ります。これは前回、前々回もやりましたが、今回はお題を参加者さんに上げてもらいました。「パジャマを着る」「掃除機をかける」「ご飯を炊く」など出ましたが、その中から今回は歯磨き、をやりました。私が歯磨き大事と身に染みていた時期だったので、このテーマを無意識に選んだんでしょうか。でも歯磨きってとってもいいお題でした。誰もがやるし、プライベート度が高いので、人によっての違いも様々です。


ワーク自体の説明をします。5分時間をとって、歯磨きの行為を分解して紙に書いてもらいます。皆さん頑張って書いて下さっていました、30項目近く書いた方もいましたね。これが世界に一つだけのオリジナル台本です。それをペアになって自分の書いたものを読み上げます。ペアの相手はそれに合わせて、隣で身体を使って演じていきます。

 歯磨きだからたいした動きをしないのですが、これが面白かったです。皆さんかなり笑ってましたね。まず歯を磨いて、フロスをして、うがいも水なのか、洗浄剤なのか?こだわりなんて大それたことじゃないんでしょうが、生活の習慣ってこんなにも違うものなのですね。そうそう、歯磨きにたどり着くまでの内面だけで終わった方もいました。認識して、考えるだけでも何個も項目ができるものですね、哲学的。それとは逆で、ひたすら具体的に磨く行動を描写するのも哲学的ですよ、歯磨きとは何なのか、、、を考えさせられました。磨き方も縦みがきする方もいました、奥が深い。介護現場で口腔ケアする時に、右か左、どちらから磨きますか?って聞いた方がいいかもしれませんね。意思を伝えられないような重度の入居者さんは、こっち側から磨いてほしいのに!って思っているかもしれません。生活のことを考えるのって、細かくて深くて、面白いなあ。

  さて、お次は新作、「今日は火曜日/何してんの(仮)」です。これは二つのワークから成り立っています。まずは、「今日は火曜日」から。リーダー役が、「今日は火曜日だよ」というのに参加者さんが一言答える、それを順繰りに回していきます。答える内容は、火曜日だ、を受けてそれに乗っかる回答です。例えば「大変だ、ごみの日だ!」とか「今日はお休みだ!」とかなんでも良いのです。ただし、「そんなわけないじゃない」とか「何言ってんだ」などと、全否定するのはなし、というルール。

これは演劇ワークショップの精神、「YES、AND」(まずは受け入れて、それを前に進める)を体現するワークです。今回は私が火曜日だよ、という役をやりましたが、これは交代制でやっても良かったですね。皆さんのはっとするお答えに、思わずニヤリとしてしまう。次に発展形の介護バージョン。認知症の方の基本的な症状として、何度も話を繰り返すという症状が特徴的です(全員というわけではありません)。介護現場でよくある状況として、お食事後にも「ご飯まだなの」とおっしゃることがあります。これを「YES、AND」で返答してもらいました。「ご飯まだなの?」に対して「むこうで作っているみたいよ」「これ食べて待っててね」「何、食べたい?」「お腹、すいたね?」などなど。介護職の私も唸ってしまう参考になる回答がたくさん出ました。実際においても「さっき食べたでしょ!」と否定するのではなく、その方の気持ちを受け入れて、このワークのように対応できると良いですね。次の「何してんの」は、演劇ワークショップでも割りとよく登場するワークです。一人が何かのジェスチャーをしています。次に並んでいる人が「何してんの」と聞きます。聞かれた方は、今やっているジェスチャーと違うことを言います。聞いた方はそのジェスチャーをします。例えば、Aが掃除のジェスチャーをしています、Bが「何してるの」と聞いて、A「バスケットボールしてるの」と答えたら、Bはバスケットボールの動きを演じます。次のC「何してるの」B「洗濯してるの」、Cは洗濯のジェスチャーをする、これを順番に回していきます。思わぬ言葉にとっさに動けず戸惑ったりしますし、自分の動きと違うこというのって結構難しいんですよね。

これもさらに介護バージョンに発展させます。「あら○○さん」と呼び掛けられるのを、否定せず受け入れた一言を返事します。○○は、固有名詞でも、職業でも、有名人の名前でも何でもありです。例えば、「あら時計屋さん」には「いつもお世話になっています」、「あらお母さん」には「ただいま、もうご飯食べた?」と呼び名に合わせた返答をします。一言ならず会話が発展するペアもありましたね。これは、認知症の方が相手を自分の記憶の中の誰かと思い込んで呼び掛ける状況を想定しています。


そして最後の発展形では、今までを組み合わせたお題です。介護現場の設定で、入居者さん役、と介護者さん役になります。まず、介護職が「こんにちは」、入居者は「あら○○さん」と自由に呼びかけます。それを受け入れる返答をしながら、介護者「今何してるんですか?」、入居者「○○してるのよ」と答えます。「○○してるんですね」と受け入れて会話していきます。そして、この介護職は入居者さんをお昼ご飯の食堂まで連れていきたいという目的があるという設定です。会話をしながら、うまくかみ合って連れていければOK,でも連れていけなくても会話が盛り上がってもOK、というゆるい縛りにしました。何がなんでも、だと強引な選択肢も出てきてしまいますからね。

今回は、制限時間は2分でやってみました。、、、これが盛り上がりましたね!介護職はお昼ご飯連れていきたいけど、「犬の世話をしないといけない」、「パスタを作って食べなきゃいけない」、など大事な用事をしている人をどうその気にさせるか?短い時間でしたが、それぞれのペアでドラマが生まれていましたね。この課題を上手にクリアするのはかなり難関です。ちなみに、私は介護者役をやった時に、見事に敗北。食堂に連れて行けず、犬のお散歩することになりました。
でも、たとえうまくいかなくても、入居者役に振り回されて右往左往する方がウケて盛り上がります。それはそれで良し、なんですね。目的と衝突という演劇のドラマ構造がここに含まれている気がします。このワークは我々の、目玉のワークになりそうな予感。次回以降もやって、育てていこうと思います。

 最後は前回もやりました、「人生のアンケート」です。アンケートをもとに、お芝居の一シーンを作っていきます。内容は、輝いていた時代はいつか、何をしていたか、誰と一緒にいたか、というもの。将来自分が認知症になった時に、いつの時代に戻るのか、誰のことを呼びかけるのか、を想像してもらいます。演劇関係の参加者さん二人が同じ回答になっていたのが面白かったですね。役者は好きなことが「芝居の稽古」。それが趣味であり、人生の大事な時間でもあるんですね。今回はただアンケート取るだけでなく、ペアでインタビュー形式で聞きあってもらいました。その分、深い内容のアンケートになったように感じます。これ、お互い聞き書きみたいな感じでできたらいいかもしれませんね。

インタビュー中

各ペアとも役割を変えて、介護施設の設定で、台本を持ちながら入居者役、面会者役を演じてもらいました。このワークはアンケートをもとに作っているので参加者さん本人が垣間見える気がします。前回もそうでしたが、見ながらぐっと来てしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後は輪になって感想タイム。概ね好意的なご感想をいただき、ほっとしました。色んな気づきを共有させてもらい、主催の私も気づきをたくさん得ました。ありがとうございます。最近ご家族を見送った参加者さんから、急変する時期にご家族の入居施設に泊まることで、ぐっと介護職と身近になったという話をしていました。その経験で、たくさん話す機会もできて良くわかったけれど、それまで週一回の面会だけでは全然分からなかったとのこと。そうか、最期の大変な時期に分かっても遅いよなと思います。介護施設でご家族にお泊り会を企画して、来てもらえばいいのじゃないかな。

 終わった後は近所の居酒屋「たつみ」にて、有志で打ち上げ会でした。介護職の方と演劇関係の方が語りあっているのを見て、この飲み会は普段出会わない人達が出合い何かが生まれるプラットフォームになればいいなと夢想してしました。もちろん楽しく飲んで盛り上げるだけでも充分なんですけどね。そうそう、おススメの飲食店紹介を一分回しでやりましたね。これは面白いのでまたやりましょう。飲み会の一部をワークショップ化。

今回上がったのは、、下高井戸「ちゃぶだい」のハンバーグ、松陰神社前「おがわ屋」のおでん生食、千歳船橋「よつ葉」の汁なし担々麵、「ヴィレッジヴァンガード ダイナー」のハンバーガー。でした。

 さて、次回は4月頃にやれるかな?また、日程決まりましたらこのブログでもお知らせしますね。たくさんのご参加、お待ちしてます!

 

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